甘い恋の賞味期限
メープルシロップとバターの組み合わせは、シンプルで家庭的。
でも、史朗が食べて来たホットケーキはいつも、少しばかり手が込んでいた。生クリームたっぷりで、フルーツもたくさん飾られていたのを思い出す。
「……ほっとけーき……」
「……そんなに食べたかったのか?」
眠る息子を見つめ、史朗は申し訳ない気持ちになる。母親がいれば、もっと愛情を注いでやれるのに。
「なぁ、ママが欲しいか? 欲しいなら……」
恋愛は面倒だが、母親探しとなれば別だ。
たったひとりの息子が望むならば、何回だってお見合いする。息子を愛してくれる女性ならば、家柄も何も関係なく結婚を申し込む。
だが世の中は、そんなに都合良くない。千紘の性格の悪さを知ると、大抵の女性は迷うものだ。雇った家政婦だって、千紘の相手をし続ければ辞表を出す。
静子が続いているのは、奇跡にも近い。
「おやすみ。また、明日な」
頭を撫でて、部屋の灯りを消す。
今度の休みは、一緒に過ごした方がいい。最後にふたりで出かけたのは、いつだっただろうか?
「……シャワーだけ浴びて、今夜はもう寝よう」
本当に、今日は疲れた。両親と会う時は、いつも疲れる。離婚した負い目があるからなのか、両親にはあまり強く出れない。
だが、再婚の話を持ち出されるとは……。
千紘のことを思えば当然とも言えるのだが、まるで義務のようで肩が重い。
しばらくは、再婚よりも仕事と息子のことだけを考えていたいのに。
「明日は何時起きだったか……」
バスルームへ向かいながら、腕時計を外す。適当な場所に置いて、いつもどこへやったか分からなくなってしまう。
それを知っているはずなのに、また適当な場所へ腕時計を置いてしまった。
明日の朝、また探すのだろう。
それが、毎朝の恒例行事だ。
でも、史朗が食べて来たホットケーキはいつも、少しばかり手が込んでいた。生クリームたっぷりで、フルーツもたくさん飾られていたのを思い出す。
「……ほっとけーき……」
「……そんなに食べたかったのか?」
眠る息子を見つめ、史朗は申し訳ない気持ちになる。母親がいれば、もっと愛情を注いでやれるのに。
「なぁ、ママが欲しいか? 欲しいなら……」
恋愛は面倒だが、母親探しとなれば別だ。
たったひとりの息子が望むならば、何回だってお見合いする。息子を愛してくれる女性ならば、家柄も何も関係なく結婚を申し込む。
だが世の中は、そんなに都合良くない。千紘の性格の悪さを知ると、大抵の女性は迷うものだ。雇った家政婦だって、千紘の相手をし続ければ辞表を出す。
静子が続いているのは、奇跡にも近い。
「おやすみ。また、明日な」
頭を撫でて、部屋の灯りを消す。
今度の休みは、一緒に過ごした方がいい。最後にふたりで出かけたのは、いつだっただろうか?
「……シャワーだけ浴びて、今夜はもう寝よう」
本当に、今日は疲れた。両親と会う時は、いつも疲れる。離婚した負い目があるからなのか、両親にはあまり強く出れない。
だが、再婚の話を持ち出されるとは……。
千紘のことを思えば当然とも言えるのだが、まるで義務のようで肩が重い。
しばらくは、再婚よりも仕事と息子のことだけを考えていたいのに。
「明日は何時起きだったか……」
バスルームへ向かいながら、腕時計を外す。適当な場所に置いて、いつもどこへやったか分からなくなってしまう。
それを知っているはずなのに、また適当な場所へ腕時計を置いてしまった。
明日の朝、また探すのだろう。
それが、毎朝の恒例行事だ。