甘い恋の賞味期限
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太陽が沈んだ20時過ぎ、千世はようやく帰ることになった。帰ろうとするたびに千紘が意地になって呼び止めたが、当の本人は遊び疲れたのか今は寝てしまっている。
なんだかんだ言って、夕食も食べてしまったし。
「それでは、お邪魔しました」
「あぁ、家まで送ろう。鍵は……」
玄関へ移動しつつ、史朗は車のキーを探す。
どうやら、またどこかへ置いてしまったらしい。
「ひとりで帰れます。まだ電車もありますし」
「家は、ここから近いと聞いたが?」
「それは実家です。今はひとり暮らしをしているので」
玄関で靴を履き、千世は背後の史朗を振り返る。
やはり、史朗は身長が高い。
「なら尚更、送ろう。君は客人なんだから」
「専務が送ったとして、息子さんはどうするんですか? ひとりですよ?
「あ……」
史朗は諦めたらしく、千世は内心、安堵する。千紘がいればマシだが、専務とふたりきりなのは精神的に耐えられない。
「あの……私、もうここへは来ません」
「それは……どうして、と聞いた方がいいんだろうな」
その言い方がちょっと引っかかるが、スルーしよう。
「ここは息子さんの家であるのと同時に、専務の家なわけです。そんなお宅に気軽にお邪魔出来るほど、私の神経は図太くないですし、面の皮も厚くないわけです」
「……そうか。千紘は、残念がるだろうな」
「うちへ来る分には、構わないので。息子さんとは、外で遊びます。だから、専務とは会いません」
ハッキリ告げて、千世は間宮家を後にする。
それを見送り、史朗は腕組みをしたまま、しばらく玄関にいた。
あそこまでハッキリ、会わないと宣言されたのははじめてだ。母親は見合い相手と会えと言うし、女性は会いたいと言う。はじめての経験だったから、少し新鮮だった。
「あ、車のキー探さないと」
思い出して、史朗はリビングへ引き返す。
しかし、今日は車を運転していない。リビングを探し続けて30分。結局、見つかったのは寝室に脱ぎ捨てたスーツの内ポケットに入っていたのだが。
太陽が沈んだ20時過ぎ、千世はようやく帰ることになった。帰ろうとするたびに千紘が意地になって呼び止めたが、当の本人は遊び疲れたのか今は寝てしまっている。
なんだかんだ言って、夕食も食べてしまったし。
「それでは、お邪魔しました」
「あぁ、家まで送ろう。鍵は……」
玄関へ移動しつつ、史朗は車のキーを探す。
どうやら、またどこかへ置いてしまったらしい。
「ひとりで帰れます。まだ電車もありますし」
「家は、ここから近いと聞いたが?」
「それは実家です。今はひとり暮らしをしているので」
玄関で靴を履き、千世は背後の史朗を振り返る。
やはり、史朗は身長が高い。
「なら尚更、送ろう。君は客人なんだから」
「専務が送ったとして、息子さんはどうするんですか? ひとりですよ?
「あ……」
史朗は諦めたらしく、千世は内心、安堵する。千紘がいればマシだが、専務とふたりきりなのは精神的に耐えられない。
「あの……私、もうここへは来ません」
「それは……どうして、と聞いた方がいいんだろうな」
その言い方がちょっと引っかかるが、スルーしよう。
「ここは息子さんの家であるのと同時に、専務の家なわけです。そんなお宅に気軽にお邪魔出来るほど、私の神経は図太くないですし、面の皮も厚くないわけです」
「……そうか。千紘は、残念がるだろうな」
「うちへ来る分には、構わないので。息子さんとは、外で遊びます。だから、専務とは会いません」
ハッキリ告げて、千世は間宮家を後にする。
それを見送り、史朗は腕組みをしたまま、しばらく玄関にいた。
あそこまでハッキリ、会わないと宣言されたのははじめてだ。母親は見合い相手と会えと言うし、女性は会いたいと言う。はじめての経験だったから、少し新鮮だった。
「あ、車のキー探さないと」
思い出して、史朗はリビングへ引き返す。
しかし、今日は車を運転していない。リビングを探し続けて30分。結局、見つかったのは寝室に脱ぎ捨てたスーツの内ポケットに入っていたのだが。