甘い恋の賞味期限
「聞こえてんでしょ!」
「聞こえませ〜ん。なんにも聞こえないので、帰りま〜す」
さっさと帰って、今日の疲れを癒そう。
「千世!」
「残業、頑張ってね」
「聞こえてんじゃない!」
心晴の指摘に笑いながら、千世はロッカールームへと駆け足で向かう。
その後ろ姿を、心晴は呆れながら見送った。
ノックの音が聞こえて、史朗は顔を上げる。返事をすれば、秘書が封筒を持って中へ入って来た。
「専務。こちら、社長より預かって参りました」
「……招待状、か」
「はい。週末にあるカスミ出版社社長の誕生日祝いのパーティーだそうです。場所は帝国ホテルで、必ず出席するように、と」
「分かった。下がってくれ」
秘書が退室すると、史朗は受け取った封筒を興味なさそうにデスクへ投げる。仕事の付き合いでパーティーに出席することは多いが、好きではない。色々と理由をつけて断ってはいるが、それでも出席しなければならないパーティーもあるわけだ。
「……? これ、開いてる?」
招待状の封が開いていることに気づき、史朗は再び手に取る。中には便箋が入っており、達筆で何かが書かれている。
どう見ても、父親の字だ。
【女性同伴だ。猪寺のお嬢さんを連れて来なさい】
「…………はぁ」
便箋と一緒に、招待状をデスクへ投げる。直接会って言わないのは、息子の気持ちを配慮してなのか……。
「連絡を……」
スマホを取り出してみたが、和音の番号を登録していない。手帳を取り出し、名刺を探すが見当たらない。
また、なくしたようだ。
「聞こえませ〜ん。なんにも聞こえないので、帰りま〜す」
さっさと帰って、今日の疲れを癒そう。
「千世!」
「残業、頑張ってね」
「聞こえてんじゃない!」
心晴の指摘に笑いながら、千世はロッカールームへと駆け足で向かう。
その後ろ姿を、心晴は呆れながら見送った。
ノックの音が聞こえて、史朗は顔を上げる。返事をすれば、秘書が封筒を持って中へ入って来た。
「専務。こちら、社長より預かって参りました」
「……招待状、か」
「はい。週末にあるカスミ出版社社長の誕生日祝いのパーティーだそうです。場所は帝国ホテルで、必ず出席するように、と」
「分かった。下がってくれ」
秘書が退室すると、史朗は受け取った封筒を興味なさそうにデスクへ投げる。仕事の付き合いでパーティーに出席することは多いが、好きではない。色々と理由をつけて断ってはいるが、それでも出席しなければならないパーティーもあるわけだ。
「……? これ、開いてる?」
招待状の封が開いていることに気づき、史朗は再び手に取る。中には便箋が入っており、達筆で何かが書かれている。
どう見ても、父親の字だ。
【女性同伴だ。猪寺のお嬢さんを連れて来なさい】
「…………はぁ」
便箋と一緒に、招待状をデスクへ投げる。直接会って言わないのは、息子の気持ちを配慮してなのか……。
「連絡を……」
スマホを取り出してみたが、和音の番号を登録していない。手帳を取り出し、名刺を探すが見当たらない。
また、なくしたようだ。