絶対主従関係。-俺様なアイツ-
「それじゃあ、お先に失礼しまーす!」

 威勢よくのれんをくぐると、常連さんとちょうど入れ違いになった。


「あれ、愛子ちゃん、今日は早いんだね!」

 この牛丼屋さんでバイトを始めて1年半。

あたし、涼原愛子はもはや看板娘となっていた。


「そうなんですよ~。また明日来てくださいね」

 愛想よく笑って店を出る。

だけど、今日もあたしはため息の繰り返し。


「はぁぁ…」


 この帰り道が憂鬱なんだ。


 お店から20分ほど歩いて、住宅街を縫うように小道を抜けてたどり着いた家。


 足をピタリと止めて見上げたのは、よく言えば、カナリ古風な建物。

現実は、木造築40年のおんぼろアパート。


「こんなところが我が家だなんて…」

 涙が出そうになるのを、いつも必死に堪える。



 ……―神様はなんて意地悪なんだろう?



 そんな風に嘆いたってなんにも変わってくれるはずもなく、錆びた金属の音を響かせてあたしは『涼原』と書かれた部屋に入る。



「ただいまー」

 無造作にローファーを脱いで、8畳1Kの部屋に足を踏み入れる。

すると、そこにはどよんとした真っ黒のオーラの塊。



 …じゃなくて、それは紛いもない父だ。


「お、お父さん!?」



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