兄妹ものがたり
「大和君は全然変わらないね」
「悪い意味でな…もうそろそろ落ち着いてきてもいい年だってのに、小学生の時から変わらないんだあのバカは」
新しいカップにコーヒーを注ぐ手元をぼんやりと見つめていると、楽しげな笑い声が聞こえた。
「中学に上がって初めて大和君を見たときは、こんなに長い付き合いになるだなんて思っても見なかったよ」
「晴人(はると)は大和みたいな奴は苦手そうだもんな」
コーヒーに大量のミルクが注がれるのを眺め、ポツリとこぼす。
「あの頃の僕は、恥ずかしがり屋で引っ込み思案だったからね、派手で目立ちたがりやの大和君とは正反対」
「今だってそうだろ?」
茶化すように言葉を放れば、晴人の顔が面白いほど勢いよく持ち上がる。
「あ…あの頃よりは、だいぶマシになったんだから!リュウさんが買い物に行っても、こうして一人で店番できるくらいには……」
「この店のマスターはお前だろ?それくらいできなくてどうするんだよ。
いつまでも竜二(りゅうじ)さんに頼りっきりじゃ、梨香(りか)さんだって安心できないぞ」