兄妹ものがたり


「僕にもね、いろいろあったんだ」


しみじみと語るその口元には僅かに笑みが浮かんでいる。


「へえー、そのいろいろって随分良いことだったみたいだな」

「え!?」


驚いたようなその顔に、笑顔を返してカップを傾ける。


「そんな幸せそうな顔してたら誰だってわかるよ、大和のバカを別にしたら」


また耳まで真っ赤にして俯く晴人を見つめていると、その口元が微かに笑みを浮かべていた。


「…素敵な人に出会えたんだ」


晴人から恋愛の話を聞くのは長い付き合いの中でもこれが初めてだ。


「ほんの何ヶ月か前にね、リュウさんにどうしてもって言われて、初めてお店に出てみたら…そこにいたのが彼女だったんだ」


何処か遠くを見つめるようなその瞳は、その時のことを思い出しているのか幸せそうに細められている。
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