兄妹ものがたり
早希*幼馴染みそして決意
「あのバカ兄貴、ほんとバカ過ぎて一緒にいるこっちが疲れる…あっ、これ美味しい」
「立河君からの貰い物」
ほんのり香るバターと、キャラメリゼされたナッツが香ばしいパウンドケーキを、ひと切れ掴んで口に運ぶ。
キャラメルの苦味を伴った甘さと、ザクザクとしたナッツの触感が口いっぱいに広がって、その美味しさに思わず頬に手を添えて目を細める。
「相変わらずふゆ樹は、お菓子作るのうまいね」
「少女趣味なだけ」
無表情でそう言い放つものの、パウンドケーキにかじりついた瞬間、僅かに頬を緩める姿に思わず笑みが溢れる。
「ななも相変わらず素直じゃないねー、これはふゆ樹も苦労するわ」
「なんの話」
「わかってるくせに」
知らんぷりを決め込むななを横目に、最後のひと切れに手を伸ばすと、すかさずその手が横から掴まれた。