兄妹ものがたり


「あたしだって他の子達みたいに、手繋いでデートしたり…キス、とかしてみたい」


言ってしまってから恥ずかしさがこみ上げてきて、半ばやけくそ気味に手近にあったクッションをキツく抱きしめる。


「あたしだって…」

「したらいい」


美味しそうにパウンドケーキを頬張りながら、何てことないように言い放つななに険しい視線を投げつける。


「だって、もし誰かに見られてあいつに知られたらって思うと!何かもう、それどころじゃない」


グイグイとクッションを締め上げて、そのまま勢いよくベッドに身を横たえる。


「大変だね」


随分あっさりとしたその言い方に、うつ伏せになってななを睨みつける。


「人ごとだと思って!」


テーブルに広げていたケーキの包み紙を綺麗に片付けると、そこにカバンから取り出した教科書やノートを広げ始めるななに、堪らずベッドから降りて縋り付く。
< 28 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop