兄妹ものがたり
「あたしだって他の子達みたいに、手繋いでデートしたり…キス、とかしてみたい」
言ってしまってから恥ずかしさがこみ上げてきて、半ばやけくそ気味に手近にあったクッションをキツく抱きしめる。
「あたしだって…」
「したらいい」
美味しそうにパウンドケーキを頬張りながら、何てことないように言い放つななに険しい視線を投げつける。
「だって、もし誰かに見られてあいつに知られたらって思うと!何かもう、それどころじゃない」
グイグイとクッションを締め上げて、そのまま勢いよくベッドに身を横たえる。
「大変だね」
随分あっさりとしたその言い方に、うつ伏せになってななを睨みつける。
「人ごとだと思って!」
テーブルに広げていたケーキの包み紙を綺麗に片付けると、そこにカバンから取り出した教科書やノートを広げ始めるななに、堪らずベッドから降りて縋り付く。