兄妹ものがたり
ゴロンと寝返りをうってななの背中を見つめる。
「気まずくなったって、仮に喧嘩したって、別に気にすることじゃない」
ノートと教科書をしまった次は、小難しそうな参考書を取り出す。
その様子をジッと見つめて次の言葉を待っていると、不意にこちらを振り返ったななと目があった。
「だって二人は兄妹でしょ」
随分と大人びたようなその言い方に、まるで年上に諭されているような気分になる。
年齢でいえばこちらの方が少し上なのに、雰囲気はななの方が断然上だ。
それが何となく悔しくて、逃げるように視線を外すと仰向けになった視界に見慣れた天井が広がった。
「…あたしはいいよ……でも、あっちは違うじゃん」
呟いた声は、届いているはずなのにななからの返事はない。
「確かにあたしは、兄妹だから喧嘩したってなんてことないけど…向こうはそうじゃないでしょ、喧嘩したらそのまま終わっちゃうことだってあるんだよ」
ずっと昔から、二人が一緒にいる姿をよく見ていた。
長い間見てきたからこそ、自分のせいでその仲が壊れてしまうのはやるせなかった。