兄妹ものがたり
「まあまあ、そう怒るなよ。
それで、あんなに嫌がってたのに一体どういう風の吹き回しなんだ?」
パッと浮かんだななの顔を、ふるふると頭を振って打ち消す。
「べ、別に…何となくだけど」
ここでななのおかげだと認めてしまうのは少ししゃくだった。
「まあなんでもいいけどな、俺もそろそろ限界かなって思ってたし」
グッと仰け反って夜空を見上げる彼に合わせて、古びたブランコがギギーっとさびた音を立てる。
「俺達付き合ってるのにさ、人目を避けてコソコソしたりして、堂々と会えないのは…何か虚しいっていうか、淋しいよな」
そう呟いて、軽くブランコを漕ぎ出した彼はしばらくしてピタッと足を止めると、ゆっくりこちらを振り向いた。
「決心してくれて、嬉しいよ」
街灯に照らされてぼんやりと浮かび上がるその笑顔は、本当に嬉しそうで心が震える。
彼もまた自分と同じ想いを抱えて、同じように悩んでいたことに胸がジワーっと熱くなってくる。