兄妹ものがたり

優しい声音に、僅かに顔を上げると彼が微笑んで手を差し出していた。


「俺も同じ気持ちだ」


あまりの嬉しさに、頬が緩むのを止められない。
そっと重ねた手の平からは、彼の温かさが伝わってくる。
じんわりとした温もりは、長いあいだ焦がれていたものだった。


「そういや…まだ決心しただけで、あいつに言ったわけじゃないから“これ”見られたら大ごとだな」


楽しそうに笑って“これ”と繋いだ手を掲げる彼に、強気で笑い返す。


「別にいいの、もう言うって決めたんだからそんなの気にしない」


言葉にしてみると、不思議と気持ちがスッキリしてくる。
晴れやかな気持ちで見上げる夜空は、いつもよりだいぶ輝いて見えた。


「あたしね、最初のデートは水族館がいいかな」

「そうだな」

「あとね動物園でしょ、それから遊園地と、映画も!」

「行きたいところばっかりだな」
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