兄妹ものがたり

唐突に脳内を駆け巡ったその想像に、思わず笑いが溢れた。


「そこ、笑うところかよ」

「だって」


一度笑い出すと、もう自分の力では止められない。


「考えても見ろよ、あの大和だぞ!晴人のことなんか未だに“ハレ”って呼んでるあいつだぞ!“はれと”じゃなくて“はると”だって何十回も教えてるのに…そんなバカをお義兄さんって呼ぶんだぞ……こんな恐ろしいことはないだろ」


この世の終わりみたいな顔をして騒ぐ彼を横目に、笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭う。
彼には申し訳ないが、それはそれで面白そうなので一度見てみたい光景ではある。


「笑いすぎだぞ早希」

「ごめん」


なんとか笑いを堪えながら体を起こすと、未だに険しい顔をする彼がいて、堪らずそのシワの寄った眉間に手を伸ばす。


「またシワが濃くなったんじゃない?いっつもそんな顔してるからだよ」
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