兄妹ものがたり
ゆらゆらと頭を揺らして、ヘラヘラ笑う様子は完全に酔っ払いのそれだ。
深いため息と共に、鋭くこちらを睨みつける先輩に、弁明するように激しく顔の前で両手を振る。
「言っときますけど、おれのせいじゃないです!確かに、弱いの知っててガンガン勧めたのは良くなかったですけど…最終的に飲んだのはハレですから」
「開き直るな」
拳を脳天にガツンと叩き込まれ、あまりの痛みに目尻に涙が浮かぶが、懐かしいその痛みに思わず笑みが溢れる。
「全くお前は、でかくなったのは図体だけか」
呆れたように呟いてようやく腰を下ろした先輩の元に、タイミングを測ったように店員が現れ威勢のいい声を張り上げる。
「烏龍茶と、あと水を」
スーツの上着を脱ぎネクタイを緩めながら、やたら元気のいい店員の繰り返す注文に無言で頷き返す先輩をしばらく眺め、つまらなそうに唇を尖らせる。