兄妹ものがたり


「あれーやまとくん…いつからあたまがみっつになったの?」

「おれは妖怪か」


楽しげに頬を緩ませて、既に自分の力では立てなくなった晴人がぐったりと肩にもたれかかる。
成人男性の平均的な身長と体力だと自負している自分に、上背のある晴人の全体重がのしかかっているのは正直とても辛い。


「小向は後部座席に寝かせて、仕方ないからお前は前に乗れ」


歩いて帰るのは無理だと判断された晴人を先輩の車へと、半ば引きずるようにして運ぶ。


「いいか、あくまでお前は小向のおまけだ、そのことを忘れるなよ」

「もちろんです…!けど、まだですか先輩……」


生まれたての子鹿のように足をプルプルさせながら、ひたすら先輩の後に続く。


「駐車場がない店を選んだ自分を恨め」


ネオンが眩しい飲み屋街を通り過ぎて、ようやく駐車場までたどり着くとなんとか晴人を後部座席に押し込む。


「次からはこんなになるまで飲ませるんじゃないぞ」
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