【銀魂】おんしが好きじゃ
おんしとお隣さん
1話 「こんにちは」
〝なぁなぁ!陸奥!!〟
〝なんじゃ坂本〟
〝大人になったらな、ワシ絶対陸奥のお嫁さんになるきー!〟
〝それは、性別的に無理があるぞ。〟
〝あ、お袋さんじゃったか〟
〝お前のハラから産まれとぉないわ。〟
これ、寺子屋での会話に見えますか?
答えは分かりますよ。
見えます、はい。完全に。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・
コンコンコンッ
コンコンコンッ
ドアの音が鳴る・・・・・
〝はいはいはーい〟と言いながらゆっくり開けると
「こんにちは、今日から隣に引っ越してきま‥‥」
綺麗で長い髪をして
色白なとても美人なおなごが、
引越し蕎麦とやらを持って佇んでいる。
言葉を詰まらせたのは
ドアを開けたモジャモジャ男、‘坂本’も同じだった。
「「陸奥!? 坂本!!」」
言葉が重なった瞬間
びっくりしたせいか時がゆっくりになった。
坂本はサングラスを取って、本当にアイツなのかを確かめた。
やっぱりアイツ‥‥二度見三度見しても、
やっぱりアイツにしか見えない。
女は、眉を八の字にしてみたが。
やはりアイツ。
「む、陸奥ゥ!!」
何故か抱き着いたが、
女は
「やめろ、離れろ。」
顔に手をめり込ませる。〝いだだだだだだ!〟
そう言えば、服から坂本の身体が離れていった。
「ま、まぁ‥‥
入れ」
無言でドアを通り、蕎麦を坂本の胸に押し当てた。
坂本は
〝何て恥ずかしがり屋な奴じゃ‥‥〟
と聞こえないように呟いた。
鍵を締めて、リビングに入ると。
女が正座で座っていた。
「なんか飲むか?」
「いらん」
「そ、そうか‥‥!」
自分の散らかった部屋を見て、
陸奥が来るならもっと片付けとけば良かったのぉ‥‥嫌われるじゃろうか‥‥
女は坂本の散らかった部屋を見て
変わっとらんな。
ただ、それだけ。
軽くため息をつくと、それだけでビクッと目を見開く坂本を見て
〝何をしちょる〟と少し笑ってしまう。
「久しぶりじゃな、坂本。」
「あぁ、久しぶりじゃ。
元気しちょったか、何年ぶりかの。」
喋りながら胡座をかいて座る。
‘陸奥’と坂本が出会ったのは寺子屋での事。
いわゆる幼馴染みで、いつもいつも一緒に居て
離れなかった。
陸奥は人見知りで坂本にしか喋らない、
一方坂本はとてもフレンドリーで友達も沢山居たし、何より場を和ませる人気者というやつだった。
坂本は、
一人で毎日遊んでいた陸奥を心配してどんどんアタックした結果
坂本の元気さやしつこさに負けた挙句
陸奥をお嫁さんにすると言われる始末、陸奥は坂本にだんだん気を許して皆と喋れなかった事が嘘のように、少しずつ皆で遊んだり騒いだり何より笑顔が増えていた。
小学校、中学受験に向けて一生懸命勉強している陸奥を見て。
“ワシも陸奥とおんなじ中学受験するぜよ!!”
坂本も頑張って見事二人共合格。
中学、同じ学校に通って、登校下校をし毎日待ち合わせをして学校へ向かい帰っていた。ずっと二人で居たので、一時期付き合っているという噂が流れたのは二人の‥‥いや、「陸奥の」黒歴史だ。
陸奥は美人だが、少しどぎつい所があった。
のにもかかわらず陸奥は昔ながらの
『体育館裏』に呼び出されては、ことごとく男達をフッてフッてフりまくっていた。
周りからは、「イケメンむっちゃん」という呼び名があった、
一方坂本、三年になって好きな人が出来た。
二年までは陸奥と一緒に帰っていた道も、もう一人。何故なら好きな人が出来たから。
だが、何にも出来ずあっという間に一年が過ぎて別々の高校、別々の道に二人は歩んで行った。
なので二人は中学ぶりなのだ。顔も全く変わっていなく、直ぐに分かった。
「10年以上かの、
あ、そうだ。おりょうは?おりょうはどうしたんじゃ?」
おりょうとは、そう。中学の好きな人。
「やめてくれ〜、陸奥〜。本当に意地悪じゃのぉ陸奥は。」
ハハッと笑うと、
「何にもないんじゃな?」
何故そんな事を聞くんだろうと思いながらも、
コクンと頷いた。
「そうか」
少し嬉しそうに呟いたのを坂本は
「何かあっついのぉー」
見ていなかった。