嘘とワンダーランド
『好きな人と一緒に生きます

さようなら』

お姉ちゃんの字で間違いなく書かれたその文字に、わたしたち家族は絶句するしか他がなかった。

「お姉ちゃん、どうして…?」

呟きながら、彼女につきあっている男の人がいたんだと言うことをわたしは知った。

政略結婚が嫌だから、その人と駆け落ちをしたんだと言うことも理解した。

「あなた、どうしましょう…!?

早苗が…!

早苗が…!」

わーっと声をあげて泣き出したお母さんに、わたしはどうすることもできなかった。

「参ったな…。

顔あわせの時間はもうすぐそこだぞ…」

お父さんは壁にかかっている時計とお母さんの顔を交互に見ながらオロオロしている。
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