嘘とワンダーランド

「若菜さんじゃダメですか？」

そう聞いてきた課長の声に、わたしたち家族は顔をあげた。

若菜さんって、
「わたし、ですか…？」

わたし以外の誰がいるんだって言う話だけど、わたしは自分を指差して聞き返した。

と言うか、課長は課長で一体何が言いたいんだ？

話が全くと言っていいほどに見えないんですけど…。

「早苗さんがダメなら、若菜さんでいいですよ」

課長はそう言って、わたしたち家族に向かって微笑んだ。

ちょっと待って、いかにもわたしで妥協しましょうって言う話だよね？

早い話がお姉ちゃんの代わりに俺と結婚しろって言ってるんだよね？

しかも、初めてのプロポーズがこれって…。

怒りなのか呆れなのか、どう表現すればいいのかわからない気持ちが胸にこみあげてきた。