嘘とワンダーランド
「若菜?」

京やんに名前を呼ばれて、ハッと我に返った。

「何?」

そう聞いたわたしに、
「またぼんやりかと思って」

京やんが答えた。

「ここ最近、ぼんやりとしてる回数が増えたんじゃねーか?

大丈夫か?」

わたしに手を伸ばそうとした京やんに、
「だ、大丈夫よ。

ちょっと寝不足なだけだから」

彼から距離を取ると、わたしは言った。

どうしてだかわからないけれど、京やんにはさわって欲しくなかった。

京やんは男友達だからさわられてもどうってことないのに、何故だか嫌悪感を感じた。

課長に抱きしめられた時は何も感じなかったのに…。

「夜更しは躰に悪いぞ。

躰に悪いうえに肌も荒れるからな」

そう言っている京やんはまさに女子である。
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