嘘とワンダーランド
「若菜」

お父さんがわたしの名前を呼んだかと思ったら、ポンと肩をたたいた。

「正文さんもこう言っていることだ。

早苗の代わりに彼と結婚しなさい」

そう言ったお父さんに、
「はあっ？」

驚きのあまり、わたしは思わず声をあげた。

お父さん、一体何を言っているんですか？

そう思ったわたしに、
「そうよ、あなたしか頼れる人がいないのよ？

早苗がいなくなってしまった以上、あなたを頼るしか他がないんだから」

お母さんが言った。

わたしを頼るしか他がないって…それ、ものすごく傷つきました。

早い話が、わたしはお姉ちゃんの代わりに課長と結婚しろと言うことですよね？

お母さん、その言葉を一生忘れません。

課長同様、わたしで妥協しようとしているあなたの気持ちを一生忘れません。
< 14 / 303 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop