嘘とワンダーランド
「えっ?」

「何だ、一体?」

突然のことに、わたしと京やんはオロオロすることしかできない。

「若菜、俺の近くにこい」

「あっ、うん…」

わたしは京やんの声がする方へと歩み寄ろうとした。

しかし、真っ暗で何も見えない。

声がするのはわかっているけれど、姿が見えないので京やんがどこにいるのかはわからない。

「ただ今停電のため空調を停止しています。

復旧までしばらくお待ちください」

アナウンスが会議室に流れた。

「何だ、停電か」

京やんはホッとしたと言うように呟いた。

何事かと思ったけれど、ただの停電だったみたいだ。

「京やん、どこー?」

窓から漏れている夜景の光だけじゃ足りなくて、京やんの姿は全く見えない。
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