嘘とワンダーランド
「あー、ごめん。

動くな、そこにいろ」

京やんがそう言ったのでわたしはその場で立ち止まった。

「今、そっちに行くから。

少しの間だけ待っててくれ」

そう言った京やんの顔がほの明るくなった。

彼の手元にはスマートフォンがあった。

そうか、スマートフォンと言う手があったか。

わたしはスーツのポケットからスマートフォンを取り出した。

プレゼンしている間は電源を切っていたスマートフォンを起動させる。

ぼわっと、ほの明るい光がわたしの顔を照らした。

これなら大丈夫だ。

京やんもわたしのところへくることができるだろう。

わたしの手元が明るくなったとたん、
「おっ、いたいた」

京やんがわたしのところへ歩み寄ってきた。
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