嘘とワンダーランド
これって、キスしようとしているんだよね?

「――ま、待って…!」

突然の状況に、わたしは戸惑うことしかできなかった。

知らなかった…。

京やんがわたしのことをそんな風に見ていたことを知らなかった。

京やんがわたしのことをそんな風に思っていたことを知らなかった。

でも…でも、わたしは彼の気持ちに答えることができない。

何故なら、わたしは課長と結婚しているから――。

今すぐにそのことを京やんに言わなければと思って、唇を開いた。

京やん、やめて!

そう思った時、
「誰かいるのか?」

ガチャッと会議室のドアが開いたのと同時に、誰かが入ってきた。

パッ!

そんな音が一瞬したのかと思うくらい、わたしと京やんは密着していたお互いの躰を離した。
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