嘘とワンダーランド
課長は、泣いていた。

「――あっ…」

わたしは手で隠すように口をおおった。

そして、とんでもないことをしてしまったことに気づいた。

課長を傷つけてしまった。

「――ご、ごめんなさい…!」

怒りに任せてしまったとは言え、わたしはとんでもないことをしてしまった。

課長を傷つけて、課長を泣かせてしまった。

眼鏡越しの瞳がわたしを見つめている。

その瞳にどうすることもできなくて、わたしはその場から逃げ出した。

どうしよう…!

どうすればいいの…!?

課長を傷つけて泣かせてしまったと言う罪悪感が、わたしの胸の中をおおった。

落ち着いて、冷静に考えることができない。

復旧作業が終わったのか、それまで暗かった社内が明るくなった。
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