嘘とワンダーランド
京やんは何でそんなことが言えるんだと言う顔をした。

「課長のことを信じてるから」

そう言ったわたしに、
「ああ、そうですか。

旦那のことを信じているんだったら、俺はわざわざついてくる必要はありませんでしたね」

京やんはすねたように言うと、キッシュを頬張った。

この状況がおもしろくないみたいだ。

当たり前か。

「課長が指名したのよ。

わたしが変な輩にナンパされないように、京やんをボディーガードとして置いておけって」

「何じゃそりゃ」

京やんが呆れたように言ったのと同時に、
「あっ、きた」

千沙さんが店内に入ってきた。

「へえ、あれが」

そう呟いた京やんの声は聞こえていないと言うように、彼女は約束をしている人物を探した。
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