嘘とワンダーランド
「それで…わたしの誕生日がどうかしたって言うんですか?」

話題を変えるために、わたしは質問をした。

その質問に課長は答える代わりにフッと微笑むと、テーブルのうえに何かを置いた。

小さな白い箱だった。

何だろう?

「えっと、これは…?」

箱を指差したわたしに、課長がその箱を開いた。

「わあっ…」

箱に入っていたのは、シルバーリングだった。

真ん中についているレモンイエローの小さな宝石は、わたしの誕生石であるトパーズだ。

「これって…!」

驚いて課長に視線を向けたら、
「左手を出して」

彼に言われて、わたしは左手を差し出した。

箱から取り出されたリングが、わたしの左手の薬指に通された。
< 220 / 303 >

この作品をシェア

pagetop