嘘とワンダーランド
課長も同じことを思ってくれていたことが嬉しくて、わたしの心臓がドキドキと加速した。
「若菜、顔が紅い」
「――んっ…」
課長の唇が、熱を持った頬に落ちてきた。
課長の指が伸びてきて、わたしの髪を耳にかけた。
「おかしなもんだな…。
結婚してから恋に落ちるなんて」
そう言った課長に、
「そうですね…」
わたしは返事をした。
わたし、さっきから“そうですね”しか言っていないような気がする…。
もっと他に言うことがあるはずなのに。
もっと返事をすることがあるはずなのに。
なのに…課長を前にしてしまったら、何も言えなかった。
「不謹慎なことを言うと、早苗さんが駆け落ちしてくれたことに感謝しているんだ」
課長が言った。
「若菜、顔が紅い」
「――んっ…」
課長の唇が、熱を持った頬に落ちてきた。
課長の指が伸びてきて、わたしの髪を耳にかけた。
「おかしなもんだな…。
結婚してから恋に落ちるなんて」
そう言った課長に、
「そうですね…」
わたしは返事をした。
わたし、さっきから“そうですね”しか言っていないような気がする…。
もっと他に言うことがあるはずなのに。
もっと返事をすることがあるはずなのに。
なのに…課長を前にしてしまったら、何も言えなかった。
「不謹慎なことを言うと、早苗さんが駆け落ちしてくれたことに感謝しているんだ」
課長が言った。