嘘とワンダーランド
「お姉ちゃんに、ですか…?」

お姉ちゃんの駆け落ちに感謝しているとは、どう言う意味だろうか?

そう聞いたわたしに、
「早苗さんが駆け落ちしてくれたから、俺は若菜を好きになったんだ。

もし俺がこのまま早苗さんと結婚してたら、何も知らなかっただろうな。

だから、そう言う意味では早苗さんに感謝してる」

課長が言った。

彼の言う通りだと思った。

もしもお姉ちゃんが逃げずに課長と結婚することを選んでいたら、わたしは課長のことを何も知らないままだった。

よくても、直属の上司としか見ていなかったと思う。

課長がわたしと結婚したから、わたしたちはお互いを好きになったんだ。

「俺、若菜と結婚してよかった」

そう言って課長はわたしを抱きしめた。
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