嘘とワンダーランド
わたしは課長の背中に両手を回すと、
「わたしも、正文さんと結婚してよかったです」
と、言った。

お姉ちゃん、わたしはお姉ちゃんのことを恨んでなんかいないよ。

むしろ、わたしと課長を結婚させてくれたことに感謝しているよ。

課長はフフッと笑った後、
「若菜」

わたしの名前を呼んだ。

「――ッ…」

唇に、また温かい感触が触れた。

「もう絶対に離さないから」

「はい…」

課長の体温に包まれながら、返事をした。

本当に課長と結ばれたんだと言うことを、改めて知った。

課長がわたしを離さないように、わたしだって課長から離れない。

口で言う代わりに、彼の背中に回した両手をギュッと強くした。
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