嘘とワンダーランド
そのとたん、
「――きゃっ…!?」

ヒョイと、わたしは課長に抱えられた。

「えっ、なっ…!?」

こう言う抱え方を“俵抱き”って言うんだよね?

それよりも、重くないのかしら…?

突然抱えあげられて戸惑っているわたしに、
「軽いな。

もうちょっと食った方がいいんじゃねーか?」

課長はそんなことを言った後、クスクスと笑った。

どうやら何ともなかったみたいだ…。

しかも、“食った方がいい”とまで言われてしまった。

抱えられた状態で下ろされたのは、ベッドのうえだった。

課長がわたしから離れたと思ったら、彼はわたしの前でひざまずいた。

「――正文、さん…?」

名前を呼んだわたしに、課長は左手を手にとった。

チュッ…と先ほど課長がくれたリングがついている薬指に、彼の唇が落とされた。
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