嘘とワンダーランド
わたしの心臓がドキッ…と鳴った。

「若菜」

課長がわたしの名前を呼んで、わたしと手を繋いだ。

頬に課長の手が添えられる。

――わたしは、彼に抱かれるんだ。

その瞬間、わたしは思った。

「覚悟はいいか?」

確認をするように、課長が聞いてきた。

口で応える代わりに、首を縦に振ってうなずいた。

課長の顔が、だんだんとわたしに近づいてきた。

心臓がドキドキと、早鐘を打っている。

頭の中がパンク寸前だ。

だけど、もうとっくに覚悟は決まっていた。

彼に抱かれて、彼を受け入れる覚悟はもうできている。

近づいてくる課長の顔を記憶の中に収めるように、そっとわたしは目を閉じた。

唇に、3回目の温かい感触が触れた。
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