嘘とワンダーランド
例えるとするならば、ドロドロに溶かされていると言った方が正しいのかも知れない。

「――若菜…」

課長がわたしの名前を呼ぶたびに、躰が震えた。

いつくしむように触れる彼の指先に、躰の温度があがって行く。

躰や唇に何度も落ちてくるキスに、わたしの中の彼への気持ちがあふれて行くのがわかった。

彼から落ちてくるその愛情に、呼吸をするのがやっとだ。

頭がぼんやりとしてきて、後少しで意識が飛んでしまいそうだ。

「――んっ…」

そんな状態の中で汗ばんだ背中に両手を回して、彼の熱を受け止めた。

受け止めたその瞬間、わたしは悟った。

この人じゃなきゃダメなんだと、改めて思い知らされた。

好きな人と繋がるこの行為がこんなにも幸せなことだったなんて、全く知らなかった。
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