嘘とワンダーランド
「ああ、そうだっけか?」

課長はそう返事をすると、メニューをわたしに渡してきた。

わたしはメニューを広げると、見つめた。

「何か好きなものをたくさん頼んでいいぞ」

そう言った課長に、
「えっ、大丈夫ですか?」

わたしはメニューから顔をあげた。

「安月給じゃないから大丈夫だ。

それよりも、今すぐに敬語をやめろ」

「え、ええっ?」

今度は一体何を言い出したんだ?

わたしは訳がわからなかった。

「け、敬語をやめろって、課長はわたしの上司で…」

そう言ったわたしを、
「夫婦なんだから、敬語を使うのはおかしいだろう。

後、会社の外では俺のことを“課長”と言うのはやめろ」

さえぎるように、課長が言った。
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