嘘とワンダーランド
何だかもうよくわからないんですけど…。

返す言葉がないと言うように口を閉じて黙っていたら、
「まさかとは思うけど、俺の名前を知らないってことはないよな?」

眼鏡越しに課長がにらんできた。

「えっ…ああ、ま、正文さん!

朽木正文さんですよね!?」

課長の鋭いにらみから逃げるように、わたしは課長の名前を呼んだ。

と言うか、何でにらまれたの?

そもそも名前を呼ばなかったくらいでにらむ必要があるの?

「正解。

ただし、名字は余計だったけどな」

課長がニッと眼鏡越しに笑った。

イジワルにも程があるんじゃないかしら?

そう思って課長を見つめていたら、
「とりあえず、早く頼め。

何かあったんだったら食って忘れろ」
と、課長が言った。
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