嘘とワンダーランド
正直なことを言うと、課長のせいで自分が失恋をしたことを忘れてしまっていた。

初めて課長に名前を呼んてもらえたこと。

初めて課長がわたしの前で笑ってくれたこと。

まるで夫婦みたいだと、わたしは思った。

実際、わたしたちは結婚して半年が経った“夫婦”なんだけど。

でもこうして笑いながら話をして一緒にご飯を食べることは、こんなにも楽しいことなんだって思った。


会計を済ませて、課長と一緒に店の外に出た。

「えっと…ありがとうございました」

店の外に出ると、わたしは課長にお礼を言った。

お礼を言ったわたしに、課長は不思議そうな顔をした。
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