嘘とワンダーランド
少しだけ…本当に少しだけだけど、課長と夫婦になれたんじゃないかと思った。

だけど…それはわたしがそう思っているだけで、実際は違うのかも知れない。

結婚して半年が経ったから、そろそろ夫婦らしいことをしようとそう思って課長は行動したのかも知れない。

「はあ…」

わたしが息を吐いたのと同時に京やんが息を吐いたので、わたしは彼に視線を向けた。

「んっ?」

わたしと目があった京やんは不思議そうな顔をした。

彼の手元には先ほど課長に提出した資料があった。

今月の終わりにあるプレゼンの資料だった。

「参ったな…」

京やんは困ったと言うように笑った。

どうやらものの数分で、課長にダメ出しをされたうえに返されてしまったようだ。
< 97 / 303 >

この作品をシェア

pagetop