GOLD BOY〜不良彼氏〜



不機嫌そうな緑さんは、ドアの前に立ったままで葵の部屋の中に入ろうとしなかった。



「俺のバイクの鍵知らね?」

「悪い、俺が持ってる」

「あ?」



地響きが聞こえてきそうなくらい低い声を出す緑さんの不機嫌な顔は更に不機嫌になった。



それに葵は特に冷や汗をかくでも焦るでもなくて、いつもみたいな態度で話を続ける。



「この前友達と出掛けん時に貸してもらった」

「勝手に使ったのか」

「悪い、紅姉が俺のバイク乗ってったから緑兄の借りた」



話してる間も緑さんの眉間にはどんどんシワが寄ってて、完璧怒鳴る寸前の顔になった。



それなのに、葵は気だるそうにポケットに手を突っ込んでお兄様の前に突っ立ってる。



お兄様がこんな怖くて鬼みたいな顔してんのにいつも通りとか……



葵ってもしかして怖いもの知らずだったりすんの?!



「俺のバイクは勝手に使うなって前から言ってんだろうが」

「だから悪かったっつってんだろ」

「あ?お前それでマジで謝ってるつもりかよ」



お兄様の声はこの世のものと思えないほど低くて、私はこの声によって消えちゃうんじゃないかって思った。



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