GOLD BOY〜不良彼氏〜
もう自分の中で限界だったのかもしれない。
自分自身、既に限界が来てたなんて思ってもいなかったから。
限界が突然来たかのように、私に重くのし掛かった。
「それは出来ない」
葵は煙草が無くなったからと言って、コンビニに煙草を買いに行ってしまった。
だからかは分かんないけど、舞子さんは私と2人だけになった途端、話し方がキツくなった。
最初は私だけに聞こえるように小さな声で話してたけど、
慰めてもらってもいいかな?って聞く時は、特に葵を気にすることもなく、普通のボリュームで話してた。
「あたし、康介もいなきゃ困るけど、葵もいなきゃ困るの」
甘い大人な声が、私の耳に嫌でも入ってくる。
「モデルやってるとね、支えてくれる人がいなきゃいけないのよ」
さっきまでの悲しい表情の舞子さんはどこにもいなくて。
葵が気にしなくていいって言ってた"あの"言葉を思い出した。
慎悟くんの、言葉。
舞子さんはまだ葵のことを好きだって。
でも葵は気にしなくていいって言ってくれた"あの"言葉。
「康介のことは好き。だけどそれは恋人としてなの。あたしは、恋人は支えてあげたいの」
舞子さんは続ける。
甘い声で続ける。
その声が更に、私を追いつめる。
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