GOLD BOY〜不良彼氏〜



葵の手が私の頭に伸びてきたと思ったら、その手は私の背中にまわって、


私は葵に力強く抱きしめられる形になった。



葵は胸の中で泣く私の背中をさすることも、頭を撫でることもせず、ただ力強く抱きしめてくれた。




「………戻りたい……っ」




やっと出た声は自分でも本当に声が出たのか分かんないくらいの小さく掠れた声。



たくさん泣いたからか鼻が詰まって、普段の声と比べたらとても聞こえづらいと思う。



葵に聞こえたのかも分かんなくて、私の心臓はドックンドックンと音を立てて早く動き出した。



どうか聞こえてて、と。

私の気持ち分かって、と。



抱きしめ返すように葵の背中に自分の腕を回して、葵のように力強く葵を抱きしめた。



もしかしたら『無理に決まってんだろ』って突き放されるかもしれない。



でも『戻ろう』って、また一緒にいることを選んでくれるかもしれない。



その両方が混じって心臓がドックンドックンしてて、それが葵に気づかれてたらどうしようって恥ずかしくなった。



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