GOLD BOY〜不良彼氏〜



小さい子どもの声も、寿司を握る男の人の声も、周りでお喋りする他のお客さんの声も。



………今の私には聞こえない。



聞こえてるけど聞こえない。

耳に入るけど頭には入らない。



ただ1人の声しか聞こえない。

ただ1人の声しか頭に入らない。

ただ1人の声しか胸に響かない。



「美鈴さんもそう思っているかは分かりません」


「………」


「でも、もし美鈴さんがそう思っていなくても俺の気持ちは変わりません」


「………」


「俺の気持ちが変わることは絶対にありません」


「………」


「それくらい美鈴さんに本気なんです。美鈴さんが………必要なんです」



うんともすんとも言わず頷かないお父さんは、葵が話してる間ずっと無言でいる。



お父さんは怒ってるのだろうか。

葵が何を言いたいのか察したのだろうか。

葵の本気の気持ちを……理解できないのだろうか。



普段使わない敬語を使って、私のことを美鈴“さん”と読んで、こんなに真面目に話しているのに。



私にも葵が最終的に何を言いたいのか分からないけど、

男のお父さんには、葵の本気さが伝わっていないのだろうか。



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