GOLD BOY〜不良彼氏〜
葵の家は確かに由緒正しい茶道の家柄で、いわゆる長男である葵は跡取り息子でもある。
お金は普通の家庭より入るのかもしれないけど、葵の家は普通の家庭と何ら変わらない。
住んでいるとこだって普通だし、普通の暮らしをしてる。
だから、差別をしてるみたいに葵のことを言う裕吾さんに少し傷ついた。
私がどうこう言ってもどうにかなるわけじゃないけど、普通の暮らしをしてる葵に
"金持ちなんだからアルバイトしなくてもいいだろ"と言ってるのと同じような言い方で
『金なら有り余ってんだろ?』と聞く裕吾さんが許せなかった。
でも、当の本人は気にしてる素振りもなく、意外にも笑っていた。
「金なんかありませんよ。夏休みだから、ただ―…」
「ただ?」
「美鈴と旅行行きたいんです」
葵は笑いながら隣で唖然としてる私の手を握ってきた。
そんな夏休みに旅行行きたいなんて一言も言われたことないのに、この場で急に言われたから戸惑う。
「ったく熱くてもイチャイチャしてぇのかお前らは」
葵と私が手を握ってるのに気付いた裕吾さんは、視線を下に移すと頬を赤くしてた。
意外と純情な裕吾さんは俯きながら、海の家へと私たち4人を案内してくれた。
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