野球少女だって青春したい
「野球部に女子って入れるんですね。男だけだと思ってました。」

雪乃ちゃんはのんきに話し、伸びをする。

「そうだろうね…」

私は疲れきった顔でそう言った。
さっき、何とか誤解を解いたのだが、焦ったり大声出したりしたから、精神的に随分疲れてしまった。そして何故か雪乃ちゃんの態度が少し大きくなった気がする…

「雪乃ちゃん、なんか少し生意気になった?」

私が聞くと、雪乃ちゃんはどうでも良さそうに答えた。

「そーですねー?私の態度はよく知りませんけど先輩の印象は変わりました。」

私も雪乃ちゃんの印象が変わったよ…。最初とぜんぜん違うじゃないか。初めは可愛い後輩だと思ってたのに。

「私の印象、どう変わったの?」

ちょっとした好奇心で聞いたことを後悔する。何せ雪乃ちゃんは、毒舌だったのだ。

「ん~、まず初めは私のこと助けてくれたかっこよくて強い…ほらヒーロー的な印象だったんですけどね。なんか、女子で野球部に入るって普通の人出来ないじゃないですか。それで変わってるな~と思って…。まぁ、まとめると先輩の印象は、ヒーローから変な人に堕ちました。」

痛い。痛いよ胸が。直球に言われるとチクチクくるよザクザクくるよチクチクザクザクくるよ。針が千本胸に刺さっる感じだよ。というか「堕ちました」のとこ強調して言わないで。余計傷付くよ。そして満面の笑みで言わないで。キツイ、キツイよ。私が苦しむと余計笑顔になるのが怖いよ恐い。
雪乃ちゃんは私の反応に満足したようでにこにこ笑っている。

「じゃあ、先輩。私の教室ここなんで。それじゃ。」

1年C組の前で、立ち止まり、雪乃ちゃんは手を振った。私も手を振り、雪乃ちゃんに背を向け保健室に向かおうとすると

「先輩!」

まだなんかあるのか…?心構えをし、振り返ると雪乃ちゃんは可愛い笑顔で、手を振りながら言った。

「助けて下さり、ありがとうございました!」

「!…うん!」

私は今までで一番の笑顔で、元気よく言った。
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