私立桜恋学園~貴方は何科?~
回ってきたプリントには
『恋愛科選択について』と書かれていた。
(本当に、選択させるつもりなんだ・・・)
無意識のうちに、プリントを握る手の力が強くなる。
「校長先生がお話されたように、現在の皆さんは普通科となっています。このプリントには、桜恋学園にある恋愛科の簡単な説明があります。詳しい説明は、今から配る冊子に書いてあるので、よく読んで自分の行きたい科を選んでください。」
桜井先生は今度は青い冊子を配り始めた。
冊子はそこまで厚くはなかった。
パラパラとめくってみると、確かに説明らしき文章が書かれていた。
「最初に配ったプリントに、選択した科を書く欄があります。一週間後までに書いて、私に提出してください。」
周りがざわめく。
たった一週間しかない。いまいちこの学校の事が分かっていないのに、このよく分からない恋愛科というものを選択しなければならない。
「・・・桜井先生!」
私は立ち上がった。
桜井先生が私を見る。
「こんな学園、認められません・・・!私は大学に行きたくてこの学校に来たんです。恋愛をしにきた訳じゃないんです!」
少し、大声が出てしまった。
クラスメイトの視線を痛いぐらいに感じる。
桜井先生はツカツカと私の席に近づく。
そして、笑顔を浮かべたまま言う。
「気に入らないなら、やめてもらってもいいのよ?でも、貴方がこの学園に入るためにした努力が無駄になるけど。」
「・・・っ」
こんな事を言われると思わなかった。
確かに、学校をやめれば受験勉強が無駄になる。払った入学費なども無駄になる。
桜恋学園は私立なので、決して安い額ではない。
私は俯いてしまった。