私立桜恋学園~貴方は何科?~

私が学校をやめれば、全部無駄になる。
お母さんが頑張って働いたお金も・・・

やめる、なんて簡単に出来るわけない。


「大声出して、すみませんでした。」

それだけしか言えなかった。

「話したい事があるなら、HRの後に教室に残って?聞くから。」

「・・・はい。」

私が返事をすると、桜井先生は教卓に戻っていった。

(絶対、皆にも変な奴だと思われた・・・)

入学式を楽しみにしていたのに、まさかこんな事になるなんて。

(とりあえず、教室に残ろう・・・色々聞きたい事もあるし。)

「では、皆さん。これで最初のHRも終わりにしたいと思います。プリントと冊子は家に帰ってしっかり読んでおいてね。」

桜井先生はそう締めくくった。

帰りの挨拶が終わると、生徒達はぞろぞろと教室から出ていく。

私は席に座ったままだ。


「市川さん・・・だよね?」

女子の声。見ると、3人の女子がいた。

私は、さっき大声を出した事を再び後悔をした。何か文句を言われるかもしれない。

「さっきは・・・大丈夫だった?」

1人の女子が尋ねた。

思いがけない言葉に戸惑ったが、私は頷く。

「うん、大丈夫。私もごめんね。大声出しちゃって。入学早々、雰囲気悪くしたよね・・・」

「大丈夫だよ、全然気にしてないし。うちらも今日の説明にはびっくりしたし。」

「だよねー、恋愛を学ぶとか。」

「まだ、いまいち分からないよねー」

3人が口々に言う様子を見て、私はとりあえず安心した。

(良かった・・・この様子なら、怒ってなさそう。)

「あ、それで市川さん。残って先生と話すの?」
髪を二つ結びにした女子が私に尋ねる。

「うん。そのつもり。」

「じゃあ、うちら待ってるから。良かったら、一緒に帰らない?」

「え、いいの?」

「もちろん!」

3人は頷いた。
私は嬉しくなった。これなら友達が出来るかもしれない。

「私達、校門で待ってるね。」
今度はショートカットの子が言う。

「ありがとう、じゃあ後で行くね!」

私が言うと、3人は私に手を振りながら教室から出ていった。
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