私立桜恋学園~貴方は何科?~
佐久間くんと並んで廊下を歩いている。
会話はない。
私はちらりと佐久間くんを見る。
そして、すぐに視線を逸らす。
(佐久間くんは、どうするんだろ・・・何の科を選ぶんだろう・・・)
「あのさ・・・市川さん。」
「え、何?」
突然声をかけてきた佐久間くんに戸惑いながらも私は聞き返す。
「市川さんは、何の科選ぶか決めてる?」
佐久間くんは私と同じような事を考えていたみたいだ。
「ううん、まだ決めてない。色々あるみたいだけどあんまり勉強に影響なさそうな科にするつもりかな。・・・佐久間くんは?」
「俺も、まだ決めてないんだ。まあ、今日もらった冊子とかちゃんと読んで決めるけど・・・市川さんとは、考えが合うから一緒の科になれたら・・・って、ごめん。変な事言った。」
佐久間くんはそう言うと、私から視線を逸らした。
(変な事とか言ったっけ・・・?)
イマイチ分からない。
「あー、いたいた!優人、お前話終わったの?」
向こうから3人の男子が佐久間くんに手を振っていた。
あの3人も確か同じクラスだ。
こちらに来た3人は私と佐久間くんを交互に見る。
「お、優人、女子と帰ってんの?」
からかうような口調で男子の1人が言う。
こういう話はだいたい「お前ら付き合ってんの?」みたいな話題にいく。
何回も経験した事あるから分かっていた。
私は佐久間くんが口を開くのを遮るように、その男子の前に立った。
「私と佐久間くんは、桜井先生と話してたから偶然一緒になったの。教室には2人しかいないんだからどうしても2人で歩いてる事になるよね?一緒に帰ってるわけじゃないよ、私だって他の子と待ち合わせしてるし。」
(早口すぎた・・・?)
皆、ぽかんとしている。
何だかその場に居づらくなった私は、再び慌てて口を開く。
「そ、そういうわけだから。他の子達待ってるから。じゃあね。」
私はくるりと背中を向け、一回も振り返らず歩いた。早足で。
(はあー・・・危なかった。)