私立桜恋学園~貴方は何科?~
お母さんと共に学校に向かうと、同じ制服を着た人達が沢山いた。
友達と笑いながら話している人、仲いい人と離れて少し不安そうにしている人。
色々な人がいた。
私も同じ中学の人はいない。
知らない人だらけなので、私も少し緊張していた。
慣れれば普通に話せるようになるので、慣れるまでの我慢だ。
私は、早く友達が出来る事を祈った。
「じゃあ、お母さん。私は教室に行くから。入学式終わったら正門で待ってて。」
隣を歩いていたお母さんに私は言った。
お母さんは頷いた。
「分かったわ。じゃあ、また後で。」
お母さんは体育館に向かい、私は教室に向かう。
下駄箱で靴を履き替えていると、すぐ隣に1人の男子生徒がやってきた。
そして、靴を履き替えながら私を見る。
「ねえ、クラス、6組?」
「え・・・う、うん。」
突然声をかけられて驚いたが、無視も良くないので私は頷いた。
すると、男子生徒の顔が明るくなる。
「良かった、俺も6組なんだ。同じクラスの人探してたんだよ。教室の場所、分からないから。」
「え、教室の場所が分からない・・・?」
私は思わず首を傾げてしまった。
場所が分からないもなにも、教室は下駄箱からずっと真っすぐ行った所にあるのだ。
迷う必要なんてないはずなのに。
「教室、真っすぐ行けば着くよ。」
「え、マジ・・・?」
「っていうか、受験の時と合格発表の日にこの学校来たよね・・・?」
「来たけど、俺記憶力ないからなー忘れたわ。」
あっけらかんと言う男子生徒を見てたら、何だかおかしくなってきた。
思わず笑いが出る。
男子生徒は僅かに顔を赤らめる。
「あ、笑ったな。」
「だって、面白かったから。」
私はそう言って、歩き始める。
男子生徒も私の隣を歩き出した。
「名前、何て言うの?」
「市川優梨、だよ。よろしくね。そっちは?」
「佐久間優人。いやー、いきなり恥ずかしい所見られたわ。よろしくな。」
まだ少し顔が赤い佐久間君。
ちょっとだけ可愛く見えた。
そうして二人で教室に入ると、半分ぐらいの人数の生徒が席に座っていた。
席から離れて他の生徒と話している人もいるが、基本的には皆自分の席に座っていて、緊張した表情を浮かべていた。
何だか入試の時と雰囲気似てるな、などと考えながら席に着いた。
佐久間君とは席が離れていた。
私は、鞄を机に置いて、軽く辺りを見渡した。