私立桜恋学園~貴方は何科?~


男子生徒達が出ていくと、佐久間くんは私の方に来た。

「2人とも大丈夫?ごめん、東城が上手くまとめるかなって思って見てたんだ。そしたら殴られそうになってるから・・・さすがにまずいと思ってさ。俺、先生に呼ばれていなかったから東城が来た所しか知らないけど・・・何かされた?」

「ううん、特には。心配しないで。」

「私も大丈夫だよ。」

佐久間くんはホッとしたような表情になった。


「ふふっ、これで解決かな?」

突如後ろから声をかけられる。

私達が振り向くと、美川先生が笑顔で立っていた。

「とっくに授業始まってる時間なんだけど・・・」


「「「え!?」」」

私達は3人同時に声を上げた。

そういえば10分休みだったな、と今さら思い出す。
そして、次の授業も恋愛の授業だということも。

「えと、すいません!」

すぐさま私は頭を下げる。

しかし美川先生は笑顔を崩さない。

「いいのよ~東城くんも佐久間くんもかっこよかったし!」

「見てたんですか?」

「うん!最初からね~どうするかな、って見てたの。もちろん酷かったら先生が止めに入る予定だったけど、佐久間くんに先取られちゃった☆」

笑顔で言う美川先生に佐久間くんは若干呆れた様子だ。

「市川さんと藤堂さん。後で東城くんにもお礼言っておいてね。」

「「はい。」」

美川先生に返事をしながら、私はふと疑問が浮かんだ。

(あいつ・・・東城零は何で助けてくれたんだろう・・・何か企んでる?恩を着せて、最終的には・・・)

我ながらネガティブな考えがグルグルと巡る。
助けてくれた相手にこんな事を思うのは、失礼な事なのについそんな考えをしてしまう。

(あいつの第一印象が悪すぎたのよ・・・佐久間くんみたいな人だったら、こんな事思わなかった。)

「市川さん大丈夫?体調でも悪い?」

「え・・・あ、大丈夫です。」

それなら良かった、と美川先生は笑い、周りにいた生徒達と私達に席に着くように促す。

「市川さん。」

「どうしたの?佐久間くん。」

「この授業終わった後、少し話あるんだけどいい?」

「うん、いいよ。」

私がそう返事すると、佐久間くんは席に戻っていった。

私も席に戻ろうとすると、後ろにいた美川先生と目が合った。


「これからが楽しみね、市川さん。」

美川先生は楽しそうに笑って、教卓に向かった。

(先生・・・?何が楽しみなの?)

美川先生が黒板に何か書き始めたので、私は慌てて席に着いた。
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