私立桜恋学園~貴方は何科?~
「今日は、男女で二人一組のペアを組んで、交流をしてもらいまーす!クラス変更をしない限り、三年間このクラスだからねー仲良くなりましょう!あ、聞いたかもしれないけどクラス変更は先生に言ってくれたらいつでも出来るからね!」
(男女でペア、かあ・・・まあ、恋愛の学校だからなあ・・・)
分かってはいるのだが、やっぱり男子と組むというのに抵抗がある。
「じゃあ、まずは隣の席の人と組んでみましょう!組んだら自由にお話してみてね!」
「え・・・自由に・・・!?」
誰かの声が聞こえる。
(先生が話す内容提供してくれるんじゃないんだ・・・うわ、キツい・・・)
しかし美川先生はお構いなく、「さあ、どうぞー!」と笑顔で言う。
沈黙。
清々しいほどの沈黙が流れる。
いきなりほとんど話した事ない人、しかも異性と自由に話せと言われても困惑するのは当たり前。
もちろん私の方も沈黙だった。
私とペアを組んだのは、くりくりとした目の男の子。
茶髪で可愛らしい印象を与えている。
彼は頬杖をついて、私の事をジーっと見つめている。
(そんなに見られても困るけど・・・とにかく、何か、何か、話さないと・・・)
昔からあまり男子と関わりのない私は、話題が全く思いつかなかった。
「・・・ねーねー、市川さんって俺の姉ちゃんに似てるー」
「えっ?」
無言で私を見ていた彼が突然、口を開いた。
相変わらず頬杖をついた体勢のまま、ニコニコ笑っている。
「えっと・・・お姉さん、いるの?」
これは彼なりの話題提供なのだろうか。
私はとりあえず尋ねる。
「いるよーすごく綺麗だよ。だから、姉ちゃんに似てる市川さんも綺麗。」
「え・・・お、お世辞はいいよ・・・」
「えー?お世辞じゃないよー?中学の時とかモテてたんじゃない?」
「モテるとか・・・分かんないよ・・・」
男子から面と向かって綺麗と言われたのは初めてだ。
困惑のせいで答える声が小さくなる。
顔が赤くなっている気がして、恥ずかしい。
「へえ~そうなんだ。あ、俺、水野蒼汰(みずの・そうた)ねーよろしく!」
「市川優梨、です。よろしくね。」
(水野くんか・・・なんか明るそうな人で良かった・・・)
水野くんはそれからも話題提供をしてくれた。
女子と話すのも慣れている感じで、笑顔を絶やさない。
おかげで私も話すのに慣れてきた。