私立桜恋学園~貴方は何科?~
そんな感じで話していると、美川先生がぱんぱんと手を叩いた。
皆、最初こそ沈黙だったが少しずつ慣れてきたのか自然な会話が出来るようになっていた。
そのため教室はざわついていたが、美川先生の合図ですぐに静かになる。
「皆慣れてきたみたいだから・・・ペアを変えたいと思います!次は自分の好きな人とペアを組んでみてください♪」
(自分でペアになりたい人を選ぶって事だよね・・・)
なかなか難しい課題だ。
あらかじめ決められたペアで話すだけならまだ簡単だが、今度はペアを自分で作らなければいけないのだ。
「はい、ではペア作り開始~!」
周りは困惑した表情で辺りを見渡すばかり。
「ねえねえ、そこの君!俺と組まない?」
私の隣にいた水野くんが1人の女子に声をかけた。
「え・・・あ、はい。私でよければ・・・」
声をかけられた女子は大人しそうな子で、突然の誘いに驚きながらも受け入れた。
そして、1組目のペアが完成した。
「おお、水野くん早いね♪」
美川先生が嬉しそうに笑う。
「だって、早くしないと他の人に取られる可能性があるじゃないですか。俺、取られるの嫌いなんで。皆も早くしないと取られるよー?」
最後は周りに向けて言った言葉だった。
(うーん・・・早くしろって言われてもなあ・・・)
考えているうちに、水野くんの行動で勇気を持ったのか数人の男子生徒が女子生徒を誘い始めていた。
女子生徒が男子生徒を誘う光景も見られた。
(私も誰かと・・・)
そう思った時、腕をくいッと引かれた。
「・・・あ、佐久間くん。」
「市川さん、迷惑じゃなかったら俺と組んでくれない?」
「う、うん・・・いいよ。えと、あの・・・腕・・・」
今、佐久間くんは私の腕を掴んでいる。
佐久間くんはそれに気づいて、慌てて離した。
「ごめん・・・!」
「あ、いや・・・大丈夫だよ。ちょっと驚いただけだから。」
(・・・それに、そんなに嫌じゃなかったから。)
嫌じゃなかった、というのは言えなかった。
ペアが出来たら、さっきと同じようにペアの人と話すという流れだった。
私と佐久間くんは入学式の日から会っていたし、前のクラスから一緒だったので、全く話せないという事はなかった。
「入学式の日、佐久間くん教室の場所が分からなかったよね。」
「まっすぐ行けば良かっただけ、とか・・・馬鹿すぎる俺・・・ってか、市川さんさり気なく掘り返さないでよ・・・」
「だって、面白かったし。」
(・・・ん?この言葉、入学式の日も言った気が・・・?まあ、いいか。)
「まあ、俺の恥ずかしい失態は終わりにして・・・」
佐久間くんはそこで一旦言葉を切る。
「俺、市川さんの事まだあんまり知らないから、教えてよ。もちろん俺の事も教える。あ、俺の情報なんて需要ないかもだけど。」
「佐久間くんって、自虐的だね・・・」
私は佐久間くんの事を1つ知った。