私立桜恋学園~貴方は何科?~
【零side】
保健室から出ると、少し前を藤堂莉愛が歩いていた。
すると、彼女はふと立ち止まりこちらを向いた。
「・・・どうしたの?莉愛ちゃん。」
「・・・ちゃん付けは、やめてほしいんだけど。呼び捨てでいいよ。」
(何か優梨にも同じような事言われた気が・・・)
心の中で苦笑していると、彼女は1歩俺に近づいてきた。
「ね、東城くん・・・優梨と何かあったの?私の思い違いかもしれないけど、さっき保健室に東城くん来てから、優梨の様子がおかしかった気がする・・・気を悪くしたらごめん。」
(へえ・・・この子、結構鋭いんだな。)
どう答えようか少し迷った末に、はっきり事実を話す話す事にした。
「俺ね、優梨に付き合ってって言ったんだ。だから、優梨の様子がおかしいのは多分俺のせいだよ。」
「えっ!?」
莉愛は途端に顔を赤くして、慌て出した。
「つ、付き合うって男女交際の事だよね!?」
「それ以外に何かあるっけ?」
「う・・・な、ない・・・」
莉愛はそのまま俯いてしまった。
「付き合う・・・男女交際・・・」
そのままブツブツと言っている。
(優梨といい、この子といい・・・恋愛に慣れてないんだな。)
やっぱりこういうタイプは見ていて面白い。
今までに関わってきた女子と正反対だから、新鮮なだけかもしれないが。
「・・・莉愛、今度定期考査があるの知ってるよね?」
俺は事情を話すべく、そう切り出した。
元々優梨にあんな事を言ったのには、ちゃんと理由がある。
「へ?う、うん・・・あ、恋愛科のテストもあるんだっけ・・・?」
「うん。恋愛科のテストは、クラスによって内容が違うんだ。俺のクラスは・・・もう、試験内容が発表されてる。」
「どんな内容?」
「誰かと1人、付き合う事。」
「・・・!」
莉愛は驚いた表情をした。
同時に、何かが分かったかのように俺を見る。
「東城くんは、その試験に合格するために優梨に・・・?」
「ああ。」
莉愛は黙り込んだ。
(優梨には後で説明するって言ったけど・・・納得しそうにないな。しかも、あいつ俺の事嫌ってるし。俺が話すのも聞いてくれないかもしれない。なら・・・)
「ねえ、この事莉愛から優梨に話してくれない?いきなり言ったせいで、優梨も俺の事警戒してるみたいだし・・・莉愛なら優梨の友達だし、優梨も聞いてくれると思うんだよね。」
「・・・優梨が、OKするとは思えないけど。」
「分かってる。でも、とりあえず話しておいてほしいんだ。」
「んー・・・分かった。」
莉愛は頷いた。