私立桜恋学園~貴方は何科?~


スマホが光った。

LINEが届いたみたいだ。

返信をしながら、ふと市川さんの顔が浮かぶ。

(市川さん、携帯持ってたっけ・・・LINEとかしてるのかな・・・って、さっきから俺、市川さんの事ばかり考えてないか?)

今日の朝の話を聞いて以来、何だかモヤモヤしている。

(市川さん、東城の事苦手みたいだから・・・苦手な人から付き合う事を頼まれた彼女を・・・俺は心配しているのか?)

確かに心配じゃないと言えば嘘になる。
東城零が学校の中で女子とキスしていたのを、俺は見ているのだ。
市川さんがそんな事に巻き込まれたら・・・
そう考えると、心配にもなる。

でも、それだけではない気がしていた。

心配とは違う、何か別の感情があった。

それが一体、何なのか。

分からない。

分からないー・・・







「やめろ!あいつの話なんか聞きたくない!」

「・・・!?」

ぼんやりしていた思考を叩き切るような、大声が聞こえた。
声が聞こえた方向を見ると、少し離れた先に2人の男子生徒が向かい合っていた。


「・・・あれ、あいつって・・・」

2人のうちの1人は、東城だった。
もう一人の男子生徒を睨みつけている。
2人とも、俺には気づいていないみたいだ。

(この前のキスといい、何で俺は東城が誰かと会っている場面に出くわすんだ?)

などと、少し場違いな事を考えた。


「でも、愛菜がお前とやり直したいってー・・・」

「はあ?さんざん俺の事利用してたくせに?ありえないね。デタラメ言うのはやめろよ。」

「デタラメなんかじゃないって。愛菜は本当にお前と・・・」


それからはしばらく同じような言い合いが続いていた。

(愛菜って人と東城は付き合ってた・・・?それにしても、東城があんなに怒るなんて・・・)

< 75 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop